身体障害者になった日②

下唇を噛み、ふと天を見上げると、側にいた医療スタッフの方々から励ましの声が飛んで来たものの、何一つ耳には入ってこなかった。ただ、最後に声をかけてくれた看護師さんが涙声で「この患者さんは今自分の置かれた状況を、歯を喰い縛って理解しようとしてるんです。」の言葉で、内側から込み上げてくるモノが溢れ出そうになるのを踏み留まらせてくれた。後で御礼を言おうと思っていたのだけれど、その看護師さんと合ったのはその日の夜が最後だった。

軽く呼吸をし、「この事は身内の物は知ってるのですか?」と説明してくれた医師の方に聞いてみると、「妹様からの承諾を受けています。」の言葉が返ってきたので「でしたらこの状況を受け入れます。」と近くにいたスタッフの方には聞こえるくらいの声で言葉を返した。

まずは絶対安静ですと横になるよう促され、横になって今自分がどういう状況なのかを確認してみた。
まず胸部にはコルセットが巻かれ、右手の甲には点滴用の針が2本、左手首にも点滴用の針が1本刺さってる。尿道には管が通っていてベットの横の袋と繋がっていた。自分から見てベットの右手側にモニターらしきものがあって、そこから血圧計が右腕に巻かれていて、ケーブルが体の何処かに繋げられていた。

左足を除いた体の痛みは左肩と腰。
咳をした時に胸にずんっ、と痛みが走ったので肋骨か胸骨が折れてるんだろうなと思った。

部屋はとにかく明るく、今が朝なのか夜なのかも解らない。
点滴に来た看護師さんに時間を訊ねると、今は昼の1時半過ぎだと。

ここが何処で今が何時かは解ったけれども、何故自分がここに運ばれたのかが解らない中、
ふと頭の中が冷静になり、昨日やる予定だった事や今日の約束のことなどが頭の中を駆けずり回った。

色んな方に迷惑かけてるのが今頃になってやっと気付き、でもこの状況下ではどうする事も出来ないもどかしさが胸の中で踊っていたのだけれど、点滴が効いてきたのか起きてるのか寝てるのか解らなくなっていた。

そんな状態がどれ位続いていたかは定かではないが、視えづらい視界の先で見覚えのあるボンヤリとしたシルエットと聞き覚えのある声がした。

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