身体障害者になった日①

2020年4月3日

「…きて下さ〜い。」
「…を開けて下さ〜い。」

頭の遠くの方で何やら人の声がする。

全身が気だるく、何故か喉が痛い。
てゆうか口に何か突っ込まれてるよね?と喉の痛みの原因を理解し、頭の遠くの方で聞こえていた声が少しづつはっきりとして来た。

「…ぉきて下さ〜い。」
「ぉきて下さ〜い。」
「おきて下さ〜い。」
「起きて下さ〜い。」

「…ぇを開けて下さ〜い。」
「めぇを開けて下さ〜い。」
「めを開けて下さ〜い。」
「目を開けて下さ〜い。」

言われるままに目を開けようとするが、半目ほど開いたところで瞼が落ち、落ちたらその声が更に大きく、太くなってまた頭を刺激する。

途中軽く頬を叩かれながら、ようやく瞼が落ちなくなった。

目の前には10人程の人がいて、眼鏡をかけていなかったので夫々の人の顔ははっきりとは解らなかったが、夫々の身なりを見て今何処かの医療機関にいる事は何となく解った。

医師らしき方から幾つかの質問を、喉に管を突っ込まれて声が出せないので首を縦に振ったり横に振ったりして答え、いよいよ喉に突っ込まれた管が抜かれる事になった。

抜かれた瞬間、喉にヒリヒリとした痛みが走り、医師らしき方から「あなたのお名前を教えて下さい。」と言われたのだけれども、痛みと喉が開きっぱなしの状態になってて、嗄れた声で「…ぁたしぃ…の…なぁまえは○○です。」と言うのがやっとだった。

暫くしたら声は出るようになりますよ、と医師らしき方から言われ、視界はボンヤリとしたままだったが、頭は少しづつハッキリしてきたので、左右を数度見回したあと「ここは何処ですか?」と、隣にいてくれた看護師らしき方に訊ねてみた。

「ここは○○病院の救命センターです。」と言われ、自分がキョトンとした顔になった事に気付いたのだろう、医師らしき集団の一人から、大分意識もしっかりしてきたので状況を説明しましょうとの提案を受けた。

実際の説明は提案してきた方ではなく、別の方が一つ深呼吸をした後、「私はこの病院の医師の○○です。」から話が始まった。

「あなたは昨日、救患としてこの病院に運び込まれました。」
「最初の頃は意識があったのですが、段々と意識が朦朧となり、緊急手術を行う事になりました。」
「存命を最優先とする事で手術を行い、何とか命を取り留める事に成功しました。」

「命を取り留めた」という言葉に反応して、ホッとした表情を浮かべたのだけれども、何か奥歯に物が挟まったような言い方だったのでずっと気になっていた左足の事に。

「修復出来るよう最善を尽くしたのですが」の言葉で心臓がトクンと鳴り、続いた「命を最優先とする手術方針だったので」で目頭と鼻の上のほうが熱くなり、「左足の一部を切断する処置を取らせて頂きました」と吐かれる途中で下唇を噛み、体の内側から込み上げてくるモノを懸命に押さえつけた。

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