何も情報のない世界②

初体験で小っ恥ずかしかった体拭きが終わると、体重を測られた。体重計に載ることなど無理なので、背中とベッドの間に担架のようなモノを通し、それで吊り上げて体重を測るのである。
肩口と腰元辺りにフックを掛け、徐々に持ち上げられてベッドから5、60cm位のところで止められ、安定したところで体重を測り、またジワッとベッドに降ろされた。今は亡き父も、最初のくも膜下出血の手術のあとICUに入って意識のない状態が4、5日続いたと記憶しているが、面会出来ない時間はこんな事されてたんだろうな、と吊るされた時にふと思った。

ICUに何人患者さんがいたかは定かではないが、自分以外の患者さんはカーテンで仕切られたその先で、看護師さんが大きな声で患者さんを呼び続けたり、痰を吸引する音や人工呼吸器のスーッ、ハァーと言う音が聞こえてくるので相当重篤だと思った、その名の通り集中的に治療が必要な程に。
そのような場所だと何の情報も必要とする事はないのだろうが、意識のある自分にとって何も解らないというのはとにかく不安で、術後で熱が38度前後から下がらない状態が続いていたので今は意識はあるけれども、暫くしたら様態が急変して他の患者さんと同じようにになるのではないかという恐怖に少し怯えた。

そんな中で昼食が出て、朝とは違った事で食が進まずに半分近く残し、心配した看護師さんがここにもテレビが置けるので少し気分転換されませんか?と勧めてくれたのだけど、眼鏡がないので良く見えないし、普段もあまりテレビを観る方でもないので、と言ってその提案はお断りした。それよりも時間が判るよう時計をベッドの側に置いてくれないかとお願いしたら、使っていない時計があるかどうか探してみますと相談に乗ってくれた。

熱がある中で頭の中がボーッとした状態の中、今日も妹が面会に来てくれた。面会時間が限られている為、妹夫婦共々お世話になってる方からの伝言と、父が死んだあと自分が面倒を見ていたペットの処遇、後金銭的な事を手短に話して帰っていった。今は只感謝の意を言葉でしか返せない自分が腹立たしかった。

その後、夕方の点滴の時に看護師さんがナースステーションで使っていない時計を持ってきてくれた。時間が判るようになってホッとしたものの、昨日感じた時の流れの遅さは時計があってもなくても同じだった。

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